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てにらぼ

テニスを科学する -tennis training lab-

テニスとフットワーク-オンコートのSAQ-

テニスと最大疾走速度

球技スポーツにおいて、足が速いことは重要な要素です。

ボールに素早く追いつくため、素早く陣地に戻るためなど当たり前ですが速いことは基本的に有利に働きます。

 

人間の最大疾走速度(トップスピード)というものは、直線走を行わせて20~25メートル地点において出現します。逆に言えば、およそ20mの助走がなければその人が持つ最大疾走速度は出せないということです。学校の体力測定にある50m走測定などはこの最大疾走速度の能力を評価しているわけですね。

 

このような測定で明らかになったトップスピードはテニスにおいて必要なのでしょうか。テニスにおいて重要な、ボールに素早く追いつける、素早くポジショニングする能力とどのように関わりがあるのでしょうか。

 

 

スピード・アジリティ・クイックネス

 

スポーツの世界では共通して「スピード」「アジリティ」「クイックネス」という言葉を用いてフットワークを評価します。

 

スピードとは上述した最大疾走能力、いわゆるトップスピードの能力

アジリティとは、敏捷性のことで素早い前後左右への方向転換能力(切返し能力)

クイックネスとは、主に静止した状態から1歩目を素早く出すような反応能力です。

 

サッカー・野球・バドミントンなど競技に応じて空間が違えば、求められる

能力は異なってきます。ではテニスはどの能力が重要なのか、テニスコートのサイズから考えてみましょう。

 

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シングルスコートは横幅約8m、縦幅約12mあります。

最大疾走速度が出現するのが直線走で20~25m地点ですから、20mの助走距離が取れないコート上においてはトップスピード能力の貢献はほぼ無いはずです

 

テニスコート上でのアジリティとは、打球後のサイドステップやクロスオーバーステップによってリカバリー(センターへ戻る)する方向転換動作と考えられます。ストローク動作の80%は2.5m~4.5m以内で行われている(ferrauti ,2003)ため、この距離を素早く戻れることがアジリティの評価となります。ダウンザラインを相手に打たれ、サイドラインいっぱい追いついて打球した時は7m位リカバリーする可能性もありますね。

 

クイックネスとは、ボールに対し素早くスタートし追いつくための、1歩目を素早く踏み出す能力です。ボールを見たあとの反応(筋・神経系)、反応や経験値からくる予測、スプリットステップのタイミングによって発揮されます。優れたクイックネスによって、ラリー中に素早くボールに追いつけると主導権を握ることができます。プロは、予測と反応を50/50で意識しているそうです。

 

以上を踏まえ、打点に素早く到達(クイックネス)し素早く戻る(アジリティ)能力がテニスにおけるフットワークの本質であると言えます。そのためこの2つを強化することがまず重要です。共通しているのは素早く蹴り出す能力であり、高重量のレッグプレス・スクワット等で強化することができます。

 

短距離が遅くても、どんなボールにも追いつける人は周りにいませんか?

テニスのフットワークは3・4歩内で優れていれば良いのです。

テニスと緊張

試合の心理

 

練習ではいいプレーができているのに、本番で力を発揮できない。

多くの方がこの悩みに直面すると思います。

高速フォアハンドとスーパーサーブを試合で使うために、必要な心理状態というものがあります。

 

まず練習と試合の違いは具体的になんでしょうか。客観的になって、考えてみましょう...

 

・勝敗を意識する

・観客がいる

・特別な人(異性・親・先生)が見ている

・時間的な余裕がない

 

このように心理的なストレスが多いので、試合はストレスに打ち勝つ能力を競う場であるとも言えます。

試合は練習の6割出せればいいという根性論がありますが、正しいメンタルコントロール法さえ身につければ誰でも試合で最高のパフォーマンスを発揮できるようになりますヨ!

 

 

良いプレーが出来る時の心理状態とは

 

心理的なストレスに体は敏感に反応します。まずストレスを脳が感じとり、自律神経系の中の交感神経が心拍数を上げたり血圧を高めたりして普段の練習とは違う体の状態を作ります。普段の練習でも交感神経は働いているのですが、過度の緊張により過剰に働いてしまうわけです。

 

こうした状態のことを「あがり」といいます。

逆に「さがり」もあります。。

 

「さがり」は逆に興奮が冷めて気分が乗らない状態のことを言います。この情緒的な興奮の度合いをコントロールすることが「メンタルコントロール」です。イメージできるように視覚化してみましょう。

 

                冷静かつ大胆に!

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図の縦軸は運動のパフォーマンス・横軸は覚醒状態をあらわしています。

覚醒状態が高い状態が「あがり」、低い状態が「さがり」となります。

 

逆U字の曲線が3つ書かれていますが、これは最適水準(ピークパフォーマンス)が競技により異なることを示します。例えば、単純で容易な運動課題短距離走・水泳・重量挙げ等)は赤線のように興奮してる時に最適水準がありますし、より正確性や巧緻性が求められる動作(PK・フリースロー・アーチェリー)は青線のように落ち着いている時に最適水準があるということになります。

 

では、テニスの最適水準はどこにあるのでしょうか?

 

テニスは集中力を保ちながら冷静な判断をして、時には大胆に攻めていかなければいけません。そのため黄色の山の頂点「冷静かつ大胆に!」な精神状態がゾーン状態(無意識に良いパフォーマンスが発揮できる状態)を作り出してくれます。

 

リラックスしすぎると動きのスピードが落ちて積極性がなくなりますし、興奮しすぎるとガチガチでミスが増えてしまいます。テニスなど球技は基本的に中位の興奮状態を維持できるようにしましょう。

 

しかし試合中は絶え間なく、焦りや不安から「あがったり」、もうダメかも・・・と気分がのらず「さがったり」するものです。

次回はこれらをコントロールする「メンタルコントロール」の具体的な方法を書いていきたいと思います。

 

テニスと体力(全身持久力)

全身持久力と酸素の利用能力

 今回は、テニスに必要な体力要素について「全身持久力」をテーマに考えていきたいと思います。

全身持久力は、学校のシャトルランテスト」でも測定されていて、体力やスタミナという言葉に置き換えられて広く使われています。具体的には、体の中にどれだけ酸素を取り込むことができるかという能力になります。そのため全身持久力を以下有酸素能力という言葉に置き換えて説明していきます。

 

テニスの試合では、1セットでも時には1時間を越えることがあります。とすると筋トレだけではなく、マラソンのような長時間の有酸素能力も大切な気がしますよね。トップ選手の有酸素能力は一体どれほどのモノなのでしょうか。

 

有酸素能力の評価指標:VO2MAX

 酸素・栄養素が含まれた血液を運ぶ心臓や、循環させる各器官、身体の各組織での細胞の酸素利用能力などによって個人の有酸素能力は決定されます。

これら心臓・血管・呼吸器の生理学的な反応による運動能力はまとめて「呼吸循環系能力」として評価されており、この能力の代表的な指標としてVO2MAX(最大酸素摂取量)があります。

 

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上の写真のような装置(ほかにも自転車)で、被験者を疲労困憊まで走らせた際の呼吸を分析し、1分間辺り最大でどれだけ酸素を体に取り入れる能力があるかを明らかにします。

イスに座っている時など日常生活における酸素摂取量は約3.5ml/kg/minと言われており、ボーっとしている体重80kgの人は1分間の呼吸から約281mlの酸素を消費していることになります。

 

最大運動時には安静時の8~20倍までこの酸素摂取量が増加します。各個人の体格によっても酸素摂取量は変化するため、必ず各個人の体重当たりの値(単位:ml/kg/min)を出して正規化します。

 

このVO2MAX(ml/kg/min)値が高ければ高いほど、体重1kgあたりで1分間あたりに使える酸素量が多い=細胞で生み出せるエネルギー量が多い=より長い距離を速度を落とさずに走れるということになります。

もっと簡単に言うと、より速いスピードで長い距離をランニングできる(フルマラソンのタイムが速くなる)ということです!単純ではありますが値が高い人程、有酸素系の競技能力に優れているのです。

 

VO2MAXの全国平均値を見てみましょう

一般成人男性・・・43ml/kg/min

一般成人女性・・・35 ml/kg/min

例:60kgの成人男性は1分間に最大約2580ml(約2.6L)の酸素摂取が可能

 

男性の方が筋量が多い分、酸素を多く消費するため若干高くなるようです。

 

テニスと無酸素能力

競技スポーツの世界には、長い間持続して酸素を取り入れる競技者 [マラソン・水泳長距離]や、少ない酸素でパフォーマンスを完遂する競技者[陸上の短距離・ウェイトリフティング]など特性に応じた様々なタイプの人がいます。そして、前者の有酸素系の競技者のVO2MAXは高値を示します。

私の見てきた中ですと、水泳長距離選手は約60ml/kg/min、陸上短距離だと約40ml/kg/minで、バラつきがありました。競技特性がはっきりしていると、VO2MAXも分かりやすい値になることが分かります。

 

さて前置きが長くなっていますが、、、

日本テニス協会ナショナルチームに所属する男子ジュニア(中学・高校生)~ユニバーシアード選手の有酸素能力を見てみましょう。実施された20mシャトルランテスト(小屋ら,2014)から、VO2MAXを推定することができます(表の2段目)。

 

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他にも、日本のある男子トッププロ(全日本優勝経験有)のVO2MAXは、実測値で46.4ml/kg/minというデータでした。ジュニアの推定VO2MAXで比較すると、マラソンタイムはジュニアよりプロの方が遅い可能性があるということがわかります。

 

どうやら実力者ほど「有酸素能力」が高いかと言われれば、そうではないようです。

 

そもそもなぜ運動をすると酸素摂取量が増えるかというと、筋肉に含まれている筋肉を動かす基本物質、ATP(アデノシン3リン酸)を再合成するためです。

激しい運動をするほどこの物質は減少し、呼吸を盛んにすることで肺へ多くの空気を取り入れ、血液に酸素を多く取り込み、糖や脂質を分解する再合成過程を経ることで、筋肉を動かす物質であるATPを再合成します。

 

逆に言えば元々筋肉に貯蔵されていたATPを使う分には酸素を必要としません。この予め貯蔵されているATPは、約8秒間筋肉を動かし運動を持続させることができます。この力を有酸素能力と対照的に「無酸素能力」と呼びます。

 

プロ・アマ問わず試合において1ポイントにかかる時間は5~10秒で、平均移動距離が2.5mくらいです(ferrauti,2003)から、貯蔵されているエネルギーで大体のプレーは終了できる計算となります。

これ以上の運動時間だと、糖質を分解してATPと乳酸を産生する解糖系を経て、より多くの酸素を取り込んで糖質+脂質を分解してATPを産生する有酸素系へと移行していきます。有酸素能力とは主にこの有酸素系の能力のことを指しています。

※解糖系にも無酸素寄り・有酸素寄りがありますがここでは無酸素寄りを前提に話をしています

テニスは貯蔵されていたATPを用いるATP-CP系(正確にはクレアチンでものすごい速さで再合成している)と、同じく酸素を必要としない解糖系までのエネルギー供給系を主に用いることになります。

運動時間と対応するこれらのエネルギー供給系との関係から、試合で有酸素能力が求められる場面は少ないことが分かりますね。

 

さて、全日本優勝経験のある方が、有酸素能力でナショナルジュニアより低い値が出たことも含めて、有酸素能力のみではテニスの実力を推し量れないことが分かりました。

ただ、有酸素能力が高いほうが(強度が高く長い)運動に対する心拍数が低くなるのでハードな練習でも集中でき、動きの質を落とさずに取り組めるようになるため練習効率は良くなります。基礎体力(有酸素能力)があれば練習効率が上がるというわけです。

 

例:振り回しのストローク練習で「〇〇球連続で入れる」ことを目標とした時、運動時間が長くなると心拍数が上がって苦しくなり精度が落ちますが、有酸素能力が高ければ改善されます。

 

しかし試合で必要なのは基礎体力ではなく、多くは短時間の動きの質になってきます。

短時間高強度のインターバルトレーニングを複数回行うことでも有酸素能力が向上するというデータがありますから、長いランニング好きな方は目的をもう一度考えてみると良いかもしれませんね。

テニスと運動連鎖(グラウンドストローク編)

OKCCKC

よく指導の現場で「運動連鎖でボールを打て」「運動連鎖がしっかりしている」などといった評価が見られます。

具体的に運動連鎖とは、一体どのような動きをいうのでしょうか

 

運動連鎖(kinetic chain)とは読んで字のごとく、下肢から上肢(上肢から下肢)へ各関節を連鎖させ、末端へ爆発的な力発揮を行わせることです。

 

上肢から下肢への運動連鎖を「クローズドキネティックチェーン(CKC)」 

下肢から上肢への運動連鎖を「オープンキネティックチェーン(OKC)」

と言います。この二つを連鎖させることによって短時間で爆発的なパワー発揮が可能となります。

 

テニスのグラウンドストロークのイメージに置き換えると

いわゆる溜め動作となる、打つ方と反対方向に腰部を捻りながら荷重する動作はCKC

その後のラケットを持つ上肢末端への力発揮はOKCとなります。

 

上手い人の特徴

テニスのグラウンドストロークを例に考えてみましょう。

前半のCKCが使えていないと、上肢の力発揮のみに頼ることとなり手打ちの状態となってしまいますが、上級者はこのCKCを無意識に行うことができます。

 

以下にトッププロのグラウンドストロークを例に、解剖学的視点から簡単に説明していきます。

CKC

軸足を固定させた後、軸足側の股関節を外転運動させることで、腰部に回転作用を発生させ、股関節筋群に弾性エネルギーを生じさせる。

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 ※ここで股関節外転とは、写真のようにやや内股にしながら、黄色矢印の方向に締める動作をいいます。

 

OKC

弾性エネルギーを踏込み足側の股関節内転運動によって踏込み足側に並進移動させる。この時踏込み足つま先が閉じたままだと身体回旋の可動域が制限されるためボールインパクトに合わせて踏込足つま先を解放する(回す)。

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速いラリーの展開などは、面を合わせるだけでも速いボールが行くと思いますが、ゆっくりなボールや打てるボールが来た時にパワーショットを打つために、このような効率的な体の使い方を押さえておく必要があります。

 

股関節の内転・外転動作のストレングストレーニングによる取得はチューブトレーニングが有効となります。チューブを使って、股関節周りのトレーニングをする選手は最近増えていますね。

次回は具体的なトレーニング方法を解説していきたいと思います。

 

初投稿!

まずは、ブログにお越しいただきありがとうございます〆(._.)メ

ここはトレーナーを目指すテニス好きな体育大生が、テニスについて様々な観点からアプローチをしていくブログです!

 

普段はテニスの研究・現場指導をして、プレーヤーの方々の競技力向上に努めています。最新のデータから見えることは結構多く、それらを知っているだけでも上手くなれるかもしれません。

 

テニプリの乾さんの名言

 

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テニスのデータ、興味ありませんか?笑

論文から明らかになっていることや、実践の場から得られたエビデンス(根拠)を

基に記事を書き、、、

 

 

それらをテニスの練習に毎日励んでいるジュニア、一般プレイヤー、その指導者・保護者、クラブで楽しんでいる会員さん、ダイエットや、流行りにのってラケットを衝動買いした人...など色んな人に読んでもらい、楽しんでもらうことが僕の目標です。

 

 

主なテーマとして・・・

上手い人の特徴(打ち方・考え方)ってなんだろう?

テニスってどんな体力がつくの?つければ良いの?

そのためにはどんな練習方法・トレーニングが有効なの?

 

 

などを可能な限りスポーツ科学的に(打倒テニマガ!)書いていきますので、読者のみなさま宜しくお願い致します!!